[現役翻訳者と]毎日英文読解!-『怪物はささやく』第一回「あらすじ」
略歴:渡英後すぐ、イギリスの某大手IT企業に就職。IT/マーケティング資料/サポート記事の翻訳や校正を現役で担当中。ローカライズ歴5年目。プライベートでは、現地で結婚。夫婦の共通言語は英語。
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『怪物はささやく』(“A Monster Calls”)についての概要
”A Monster Calls”というタイトルの原書は、2011年に初稿が出版されており、日本語の翻訳版も同年に出版されています。今年は2020年ですから、9年前の本ですね。比較的最近の本です。
2017年に映画化されて以来、人気も上がり、ファンタジー好きな皆さんであれば、知っている人が多いのではないでしょうか。
この作品は、 年に一度英語で書かれた児童文学の本に贈られる、イギリスの文学アワード 「カーネギー賞(The Carnegie Medal)」を始め、「ギャラクシーナショナルブックアワード(Galaxy National Book Award)」、「レッドハウス児童文学賞(Red House Children’s Book Award) 」や「UKLAブックアワード(UKLA Book Award )」など、様々な賞を受賞しています。
作者のパトリック・ネスは、イギリス系アメリカ人です。児童文学作家、ジャーナリスト、脚本家、講演家など、多彩な仕事をこなしていらっしゃいます。アメリカのバージニア州で生まれ、1999年にロンドンに移住して以来、アメリカとイギリス両方での市民権を持っているようです。
この本は、英国作家シボーン・ダウド(1960-2007)のアイデアに、パトリック・ネスが手を加えて書き直したものです。パトリック・ネスは、「彼女が生きていれば、これは彼女の5冊目の本になっただろう。
This would have been her fifth book. She had the characters, a premise, and a beginning. What she didn’t have, unfortunately, was time.
“A Monster Calls” Patrick Ness
と前置きで述べています。
簡単なあらすじ
イギリスに暮らす、主人公のコナー・オマリー(Conor O’Malley)という13歳の少年が、最近ずっと、とある悪夢に悩まされ続けている、という説明から物語は始まります。
その悪夢のせいで、コナーは日に日にやつれて行きます。眠れないからです。というのも、その夢は、コナーにとって、けして結末を見たくない夢だからです。その悪夢が終盤に差し掛かろうとしたとき、コナーはいつも、冷や汗と激しい動悸と共に目を覚まします。そしてベッド脇にあるお母さんの置いてくれた時計を見ると、それはいつも真夜中の12時7分を指しているのでした。
朝キッチンに向かって、コナーは静かに「お母さん?」と言ってみます。言ってみるだけです。コナーはそこにお母さんがいないことを知っているのです。コナーのお母さんは、コナーにはまだはっきりと告げていませんが、難病に侵されていて、2階の寝室で寝ているのでした。コナーもうすうす気づいてはいます。
コナーは、静かにシリアルを少し口に運んだだけで、ごみ収集車が来る前に、ごみ袋に入っている家庭ごみを家の前に置き、 それから、もう一つの憂鬱な世界に出向かなければいけませんでした。
学校です。
学校の集団生活において、陰気な生徒は、苛められがちです。コナーも例にもれてはいませんでした。コナーは眠れずに疲れていました。それに追い打ちをかけるように、アントンとサリーという2人の部下を従えた 優等生ハリーに目を付けられます。
コナーは一層やつれて行きます。毎晩12時7分、冷や汗と動悸と共に目を覚まし、それからしばらくは眠れず、苛められている事を相談しようにも、コナーの母親は難病に侵され、父親はそんな家族を疎ましく思っていたかのように、既に違う家庭を持ってアメリカで暮らしています。
そんな何回目かのいつもの悪夢でコナーが飛び起きた後、なぜかそこに怪物が現れたのでした。
今回はあらすじでした。以下のリンクに続きます!
[現役翻訳者と]英書で毎日英文読解!-『怪物はささやく』第二回「 冠詞、aとtheの違いを分かりやすく簡単に。」
英国古本屋のライター:K・T・エリーズ
略歴:渡英後すぐ、イギリスの某大手IT企業に就職。IT/マーケティング資料/サポート記事の翻訳や校正を現役で担当中。ローカライズ歴5年目。プライベートでは、現地で結婚。夫婦の共通言語は英語。