[現役翻訳者と]毎日英文読解!-『怪物はささやく』第二回「 冠詞:aとtheの違いを分かりやすく簡単に。」
略歴:渡英後すぐ、イギリスの某大手IT企業に就職。IT/マーケティング資料/サポート記事の翻訳や校正を現役で担当中。ローカライズ歴5年目。プライベートでは、現地で結婚。夫婦の共通言語は英語。
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第二回目 英書で毎日英文読解!
ということで今回、第一期二回目の「英書で毎日英文読解!」で取り扱う本は、『怪物はささやく』(パトリック・ネス著|池田真紀子訳)です。原書の題名は”A Monster Calls” (By Patric Ness)となります。
「aとtheにおけるパーフェクトな例文」から、この物語は始まります。
ボキャブラリ
※ボキャブラリーに急ぐ前に、「[現役翻訳者と]英語で英語のボキャブラリー!なぜ日本人にとって英語は難しいか。」を読んで、そのやり方をぜひ把握してからこのボキャブラリに挑んでみてください。
ボキャブラリーは、ここでは英語だけで表示しますので、意味として書かれてある二層目の英語がもし分からなければ、三層目の「=」を書いて、その日本語を自分の手にペンでメモするなどして覚えましょう。
英語は、物語の文脈に合った意味を載せます。
(v)show up = to appear
Online Free English-English dictionary such as “Cambridge Dictionary“/
(v)slip = to slide without intending to / to move out of the correct position
(v)grasp = quickly take something in your hands and hold it firmly
(v)whisper = to speak very quietly
(ad)lately = recently
Oxford Dictionaries etc
注記: (v) = verb 動詞|(adv) = adverb 副詞
もっと分からない単語があれば、同じように英語で意味を書き出してみましょう。例えば、検索ボックスに「slip meaning」と打ち込んで、出てくる英語の辞書を参照してみてください。
そしてなんとなく意味を把握し、=の右に書かれてある英語で以下の本文を理解しようと努めてください。100%理解できなければ、質問を「お問い合わせ」から頂ければ返します。
本文引用
A MONSTER CALLS
“A Monster Calls” by Patric Ness
The monster showed up just after midnight. As they do.
Conor was awake when it came.
He’d had a nightmare. Well, not a nightmare.
The nightmare.
The one he’d been having a lot lately.
The one with the hands slipping from his grasp, no matter how hard he tried to hold on.
The one that always ended with—-.
“Go away”, Conor whispered into the darkness of his bedroom, trying to push the nightmare back, not let it follow him into the world of waking.
“Go away now.”
解説 今日の文法/表現 「aとtheの違い 」
A Monster Calls.
“A Monster Calls” by Patric Ness
まず、本文を読んで、大体内容を把握していただけましたでしょうか?
そして本題です。
この題名のモンスターはなぜ「A」なのでしょう?
文法構造的には、A monster(S主語)+calls(V動詞の三人称単数形)という簡素な第一文系の現在形に当てはまります。
日本で教わる文法に沿って考えれば、aとtheの共通理解と言えば、「a」=「一つの」、「the」=「その」ではないでしょうか。
では、一つの怪物? その怪物ではなくて?
一つの怪物が呼ぶってどういうこと?
残念ながら日本語には冠詞という文法が存在しないので、日本語ではこれを理解することはできません。一つ視点を変えて英語で調べて理解してみましょう。日本語の文法に存在しない冠詞という英語の表現を、日本語で理解しようとする姿勢が間違っていたのかもしれません。
検索エンジンに、 “a meaning” と打ち込んで、一番上に出てくる辞書の意味に、
” used when referring to someone or something for the first time in a text or conversation.
Translation by K.T. Eries
(文章や会話中で、初めて人又は物が指し示される時に使われる)”
とありますが、まさにこのことを指しています。
読者も、この物語に出てくる少年も、本を開くまでは、まだこのモンスターを知りません。ですから、ここでは初めての紹介の意味で、”A Monster”=「とある怪物」、となるわけです。物語上まだ誰も知りませんし、紹介されても特定されてもいませんから、the Monster にはならない訳ですね。
つまり題名では、このモンスターは、まだ誰にも特定されていない、知られざる不思議さの余韻を残している訳です。
タイトルの真下に出てくるこの物語の一行目を見てみましょう。
The monster showed up just after midnight.
“A Monster Calls” by Patric Ness / Translation by K.T. Eries
(怪物は、丁度12時過ぎに姿を現した。)
もう、モンスターが出てくることは、題名で紹介済みですし、読者も少年も知っているので、この文章では、少年も読者も知っている、ご存じのそのモンスター「The monster」になっていますよね。
では、ここでthe の意味も英語で見てみましょう。”the meaning”をインターネットの検索ボックスに打ち込んで、その最初に出てくる英語の説明で構いません。
used before nouns to refer to particular things or people that have already been talked about or are already known or that are in a situation where it is clear what is happening.
Translation by K.T. Eries
(既に語られた、もしくは知られた、もしくは何が起きたのか明確な状況下の、特定の物か人を指す)
英語には、こういうまどろっこっしい決まり事があるのです。話された事や既に知られた特定のもの、何が起こったのかはっきりしている状況における特定の人や物に対しては「the」、その文脈や状況で初めて出てくる初めて紹介されるものには「a」をつける。その使い分けで、その名詞が既に特定された誰かなのか、まだ紹介されていないものなのかどうかが分かります。
日本語で翻訳をするなら、一番近い翻訳は「a」=「とある」 (もしくは訳さない) 、「the」=「あの」ではないでしょうか。
これが慣れてくると、ただaとtheを使い分けて、単純な文章を述べるだけで、言いたい事の微妙な違いをも伝えられるようになっていきます。
パーフェクトな例文はもう少し続きます。
He’d had a nightmare. コナーは、とある悪夢を見た。
“A Monster Calls” by Patric Ness / Translation by K.T. Eries
Well, not a nightmare. いや、とある悪夢ではない。
The nightmare. あの悪夢だ。
The one he ‘d been having a lot lately.
最近になって、頻繁に見るようになった、あれだ。
もうお分かりですね。
著者は、初め、まだ紹介されていない、知られざる、とある「悪夢」というものを指し示して、「a nightmare」と言ってみましたが、「not “a” nightmare」と言い方を校正しています。もちろんこの「not」は「a」にかかっています。とある、ただの悪夢ではないと言う事です。
それは、コナーが何度も出会った事のある、既に知っていた、あの特定の悪夢「The nightmare」であったと言う事です。
まとめ
a まだ文脈において紹介されていない1つのものに対して使う
the 文脈において既に語られて/知られている明確な特定のものに対して使う
最後までお読みいただきありがとうございます!
ぜひ、この本を英書でお手元に。
そして私の解説と共に、一緒に楽しく読んでいく事ができれば、幸いです。質問は「お問い合わせ」よりいつでも受け付けています。
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「[現役翻訳者と]英書で毎日英文読解!-『怪物はささやく』第三回「代名詞の表現:They」を分かりやすく。」
英国古本屋ライター、K・T・エリーズ
略歴:渡英後すぐ、イギリスの某大手IT企業に就職。IT/マーケティング資料/サポート記事の翻訳や校正を現役で担当中。ローカライズ歴5年目。プライベートでは、現地で結婚。夫婦の共通言語は英語。